テーブルに就くと、


「すみません、誘ったのは私の方なのに、予約までしていただいて…ありがとうございました」


成瀬さんはばつの悪そうな表情で、


「あの時本当は、この間お世話になったお礼に先生を食事にお誘いするつもりで声をかけようとしたのですが、先に先生の方から声をかけていただいて…ですので、ここは私に持たせていただけないでしょうか?」


何て律儀な人なんだろう。


私は医師として当然のことをしたまでなのに。


でも、同じマンションの住人で仕事でも繋がりのある成瀬さんの好意を無碍に断ることもできない。


「本当にいいんですか?」


営業スマイルだけど、頷く彼に恥をかかせるわけにもいかない。


「わかりました。こちらはご馳走になりますね、次からは割り勘ですよ」


今夜だけは、彼の好意に甘えさせてもらおう。



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