意気揚々と医局に戻る背後から聞こえる靴音。


まさか、教授じゃないよね?


でも、怖くて振り返ることができない。


どうしよう!


どうすればいいの!!!?


もうここは走って振り切るしかない。


そう結論に達し、足に力を入れると


「あ、あの……浅倉先生!」


あれ?


教授じゃないの?


振り返ると、さっきまで教授室にいたフロンティア製薬の成瀬さん。


彼の私を見る目がどこか悲しげで、


何故そんな目で私を見るの?


面倒になりそうな相手はお断りよ。


そう思っているのに、


「成瀬さん、でしたよね?今晩…空いていますか?」


今日の私はどうかしている。


彼を誘うなんて。



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