「あの時は本当にありがとうございました。先生に助けていただかなかったらどうなっていたか。

早くお礼に伺いたかったのですが、あの後なかなかお会いすることができなくて、すみませんでした」


成瀬さんと呼ばれた彼に改まってお礼を言われると、何だかとても照れくさい。


「いいえ、医師として当然のことをしたまでですから」


病人を助けることは、私達医師の仕事なんだから。


「でも、次からは救急車を呼びなさいよ!」


ははは…。


教授にやんわり釘を刺されてしまった。


あ、忘れるところだった。


「はい…あ、学会出張の報告書です」


長居は無用!


とっととずらからねば。


教授のデスクに書類を置くと、


「失礼しました」


足早に教授室を後にした。


よしっ!


うまくごまかせた!!!!


後は教授に捕まらないように、拉致されて居酒屋に連れて行かれないように逃げるのみ。



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