教授はスツールから立ち上がると、引き出物が入った紙袋を手にした。
「向井先生が娘の話をするから急に会いたくなってきたよ。孫にもしばらく会ってなかったし……これから行ってみるとしますか」
その表情は教授という仮面を外した父親そのもの。
五郎は安堵の表情を浮かべ、俺も密かに胸を撫で下ろした。
がっ!!!!
「そうだ向井先生」
教授の声に、再び高まる緊張感。
「以前から一度じっくりと話がしたいと思っていたんだ。今度飲みに行こう!キミとはいい関係が築けそうだ」
えっ……
えぇーーーっ!!!?
こ、これはいったい……
「あぁ、もちろん小野塚先生も一緒にね、楽しみにしているよ」
俺にニヤリと意味ありげな笑みを送っていた五郎の表情が落胆のそれに変わった。
フン、五郎の奴、ザマミロ。
上機嫌な教授は、鼻歌を歌いながら今にもスキップしそうな軽やかな足取りで店を後にした。
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