教授は何かを考えるようにしばらく俯いていたが、顔を上げると、ニヤリと黒い笑みを浮かべた。
ヤバい……。
ここは逃げるべきか……?
「向井先生、キミはなかなか食えない男ですね。坂田教授が気に入るのも無理はない」
褒め言葉とは思えない物言いに、言葉を返す間もなく。
「キミが小児科にいたら、私も坂田教授と同じく娘の婿にと考えたかもしれない」
えっ……
衝撃すぎる発言に言葉が出なかった。
俺の何がそう言わせるのだ。
これではまるで、娘婿にしたい男性No.1みたいじゃないか……。
いやいや、
とんでもない!
大野さん(旧姓)みたいな頭が切れて弁の立つ才女は俺にはとても太刀打ちできないって!
謹んでご辞退させていただきます。
というよりも、彼女の方から断ってくるに違いない。
心からそう思った。
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