ヤバい……。
本気で怒らせてしまったかも。
ようやく准教授になれた俺の分を弁えない言動はさすがに許されることではない。
でも、後悔はしない。
話したことは嘘ではないから。
あの帝国医大で最年少で准教授となったエリートドクターの彼女もこの時ばかりは深酒をしてしまう父親を本気で心配する娘の顔になっていた。
「私や小野塚にとっても上杉教授は尊敬する存在のひとりです。浅倉だって教授を慕い、頼りにしています。
まだまだ教授に教えていただきたいことがたくさんあると思います。教授にはこれからも元気でいて欲しい、そう思って……「もういいよ、向井先生!」
上杉教授に遮られた。
逆鱗に触れてしまったか……。
顔面蒼白の五郎の虚ろな目……あまりの恐怖に現実逃避に入ってしまったようだ。
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