自己チューオネエの五郎も唯一逆らうことのできない存在。
「う、上杉教授っ!!!!」
悲痛な声の五郎とは対照的な満面の笑みを浮かべる小児科の絶対権力者。
「向井先生、お話の途中申し訳ないが、小野塚先生をお返ししてもらってもいいですか?」
穏やかな表情とソフトな口調で若かりし頃は、患者の母親の間でファンクラブがあったというが、その裏に垣間見える威圧感に思わず背筋が凍った。
五郎が「助けて!」と目で訴えているのはわかっている。
だが、彼は義父である坂田教授にはない人望がある。
うまく隠してはいるが腹黒さも相当なもの。
敵に回したくない存在だ。
いや、ひとみと別れて香澄と結婚した段階で敵に回しているから逆らわないに限る。
すまない五郎……許せ。
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