「あんたもホッとしたんじゃないの?浅倉が幸せになって」
「そうだな……」
ひとみのためとはいえ、あんなひどい別れ方をしてしまったからずっと申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
だから今日、ひとみが晴れの日を迎えられてホッとしたことは嘘ではない。
「でも、その寂しそうな顔は何なの?まだ浅倉に未練でもあるのかしら?」
こいつ、絡み酒か……?
披露宴でもかなりの量の酒を飲んでいたからな。
「いや、巣立っていくネーベン(研修医)を送り出すオーベン(指導医)のような気持ちかな?」
ぽつりと言うと、五郎はフンッと鼻で笑って、
「あぁ、もう!そんなややこしい言い方しないで、娘を送り出す花嫁の父親の心境になったって言えばいいじゃないの!!!!」
確かにそんな言い方もあったか。
でも、それだけではなかった。
「俺、ずっと気づかなかった。ひとみが政孝の妹だということに」
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