「あぁ、本当だ」
悟さんはごまかすことなくあっさり認めた。
何でもないような素振りを見せているつもりなんでしょうけど、視線が泳いでいるわよ。
動揺しているのがバレバレじゃないの。
心の奥がじりじりと燻り出す。
「この前マンションにいた女性(ひと)がそうなの?」
「あぁ」
さっきよりも言葉少なに歯切れの悪いものになってきた。
燻る心に苛立ちが注ぎ込まれ、発火する。
「私にプロポーズをしたの…あれは嘘?それとも、からかっただけ?」
今でも耳に残っているよ、
「前期研修が終わったら結婚しよう」
そう言ったあなたの言葉。
それがどれほど嬉しかったことか。
それを励みに頑張ることができたのに。
「嘘じゃない。本気でそうしたかったよ」
彼の寂しそうな笑みが心に突き刺さる。
「だったら何故?」
ダメだ、感情的になっては。
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