だけど、彼に悟られまいと、


「悪かったわね、急に呼び出して」


そっけなく言い、臨戦態勢に入る。


悟さんは首を振って、


「いや、いいんだ。俺も話があったから」


そう言うと、私の視線を捉えた。


「ナースから聞いたわ、坂田教授のお嬢さんと結婚するんですってね?」


遠回しすることなく、本題を突きつける。


悟さんは苦笑して、


「直球だな。教えただろ?変化球も覚えろって。どの患者にも同じ治療法でうまくいくわけじゃないんだからな。
直球一本だけじゃ打ち込まれるばかりだぞ?」


わかってる、そんなこと。


私にだって変化球くらい使える。


ただあなたには使わないだけ。


使う必要なんてない。


真っ向からの直球勝負だけでも、緩急つけることができる。


球威があれば打ち返すことは不可能。


どうせのらりくらりとかわそうとするんだから。


でも、逃がしはしない。


必ず投げ勝ってみせる。



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