泣きたい夜には…~Hitomi~




「熱でもあるのか?」


慎吾が心配そうに私の額に手を当てた。


熱なんてない。


身体はすこぶる元気。


だけど心はどんより悩みの荒波の中……


こんなにも慎吾が心配しているのに、


申し訳ないと思っているのに、


素直になれなくて、


「ないってば!」


ぷいっと顔を背け、カートを押してどんどん先へと進んでいく。


あぁ、私って可愛げがない。


つくづく自己嫌悪……


そんな私に慎吾はいつもの調子で、


「今日はどこかにメシ食いに行くか?」


その声に立ち止まって、


「そうしてもらってもいいかな、あ……」


慎吾に背を向けたまま返事をしかけたその時、


カートを押す向井先生の姿が目に飛び込んできた。


その隣には大きなお腹を抱えた女性が……



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