でも、慎吾とはまだ始まったばかり。
もっとお互いのことを知って、
分かり合って、
それからでも遅くはない。
「よしっ!」
そう思い直し、医局に戻った。
「浅倉、上杉教授がお呼びよ」
医局に戻るなり、待っていたかのように小野塚先生が言った。
その表情は今まで見たことのない嬉しそうな顔。
けれど、私には不気味でしかない……。
何か、ある。
「まさか、飲み会……?」
やだよ、朝まで飲み比べなんて……。
いつもだったら鬼瓦のような顔になって怒鳴られるのに、先生は笑顔を崩さぬまま、
「んなわけないでしょ?とっても名誉なことよ。指導医のアタシも鼻が高いわ~!
ほらっ、教授がお待ちよ、すぐ行きなさい」
医局を追い出され、教授室へと向かった。
コンコン!コンコン!
「浅倉です。失礼します」
教授室に入ると、
「おぉ!浅倉先生、待っていたよ!」
上杉教授は穏やかな笑みを浮かべ、応接用のソファーに座るよう勧められた。
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