彼は左腕に繋がれた点滴を見た後、何とも複雑な表情で点滴バッグを凝視していた。


その理由を知るのはもう少し後。


「帰ってきたら駐車場であなたが倒れているからびっくりしたわ。すごい熱だったから部屋に連れて来ちゃったの」


状況説明をした後、体温計を彼に渡した。


1年以上前から駐車場で挨拶を交わしていたけれど、言葉を交わしたのは今夜が初めてだ。


「キミは看護師なの?」


体温計を脇にはさみながら彼は私に聞いてきた。


「ま、そんなところ」


本当は医師ですが…。


心の中で呟きつつも、まだ前期研修中の身分ゆえ濁しておいた。


ピピピピッ♪


彼から計測が終わった体温計を受け取り、確認すると、


「38度9分か…まだ熱が高いわね。座薬入れようか?その方が早く下がるし」


そう言うと、彼は


「えっ…」


困惑の表情を浮かべた。



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