泣きたい夜には…~Hitomi~




慎吾は優しい笑みを浮かべると、


「俺もひとみが医者になって良かったと思ってる。でなかったらあの時俺は駐車場で凍死していた」


そんなこともあったね。


思えばその出来事が私達の距離を縮めたきっかけだった。


「そうだね。だから私に感謝しなさい」


なんて、笑いながら慎吾に抱きついた。


外は夕焼けで海を真っ赤に染めていた。


明日もきっといい天気になるに違いない。


「風呂、一緒に入るか?」


えっ……


突然の慎吾の言葉に、顔がカァーッと熱くなる。


覚悟を決めて、


「うん」


小さな声で返事をしたけれど、恥ずかしすぎて慎吾の顔を見ることができない。


慎吾に手をとられ、部屋風呂(露天風呂)に行こうとしたその時、


「失礼します。お夕食をお持ちしました」


仲居さんの声が聞こえた。



.