彼のおかげで今夜は悟さんのことを考えずに済む。
もしもひとりだったら一晩中泣き明かしていたに違いないから。
「ちょっと頭を上げますよ」
彼の頭を少し浮かせ、その下に保冷枕を入れた。
「お粥、作っておいた方がいいね」
昏々と眠る彼に布団を掛け直し、キッチンへと向かった。
どのくらい経ったのだろう?
うつらうつらしていると、
「う……ん…」
彼がゆっくりと目を開けると部屋の中を見回した。
部屋の間取りが同じでも中の様子が違うことに戸惑っているようだ。
「気がついた?」
声をかけると、彼は戸惑いの表情のまま、
「ここは?」
掠れた声で私に聞くと、体を起こそうとした。
「起き上がらないで、今点滴しているから…ここは私の部屋よ」
両手で彼を制し、布団に押し戻した。
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