泣きたい夜には…~Hitomi~




「実は俺も薬品開発がしたくて薬学部に入ったんだ。製薬会社に入社したが、夢は叶わずMRだけどな」


無言で話を聞いていた慎吾が口を挟む。


慎吾が私と同じ夢を追っていたとは意外だった。


MRだってそうそうなれる職業ではない。


だから卑下することなんてない。


「あ、ごめん!話の腰折っちゃって。話続けて」


申し訳なさそうに言う慎吾に、無言で頷き、話を続けた。


現役で一流医大に合格したお兄ちゃんは、お父さん達の期待に見事に応え、医師国家試験に合格した。


私も嬉しかったけれど、お父さん達は狂喜乱舞の大騒ぎで……。


今思えば、あの出来事は浅倉家最大の盛り上がりだった。


順調に話していたのに言葉が出てこなくなった。


「ひとみ、もういい……」


慎吾が私の肩を抱いて話を止めさせようとしたけれど、首を振って、


「大丈夫だから」


そう言葉を返し、慎吾の手を握るとまっすぐ彼を見た。



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