お父さんが病院を経営していることもあり、物心つく前から病院へは頻繁に足を運んでいた。
幼い頃からお父さんのいる診察室よりも薬局のガラス越しに調剤をしている薬剤師さんを見る方が好きだった。
成長するにつれ、薬についての興味が尽きなくて、お父さんの書斎にある薬に関する本を読んだり、お兄ちゃんから本を借りたこともあった。
漠然とした夢だったけれど、自分の手で薬を作って病気を治したい。
ひとりでも多くの命を救いたい。
調剤ではなく、新薬開発をしてみたい。
そう思うようになった。
だから高校は、迷わず都立の進学校に入学した。
もちろん、お兄ちゃんを味方につけて大反対だったお父さん達を説得した。
この時はお父さんよりもお母さんの嘆きっぷりがすごかった。
その女子校はお母さんの母校で、大学まであるこの学校で私を良妻賢母に育てたかったようだ。
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