「母さんが言ってたけど、料理教室に通い始めたんだって？」


お兄ちゃんは心配そうに言った。


「うん、お母さんがもっとレパートリーを増やして知識を身につけろっていうから」


料理教室に通っているのはほとんどが大人の女の人。


私みたいな子供がいると、


「何でこんな子供がいるの？」


そう言いたげに変な目で見られてしまうのが嫌だった。


先生には、


「これだけできるのならいつでもお嫁に行けるレベルよ。アシスタントで雇いたいくらいよ」


なんて、言われたこともあった……。


お兄ちゃんは困惑した表情になり、


「ったく、中学生相手に何をやらせているんだか……お前も嫌だったらはっきり言わなきゃダメだぞ」


そう言うと、私の頭をクシャッと撫でた。


お父さん達よりもお兄ちゃんの方が常識を弁えているということは、中学生の私でもわかった。



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