そんな両親の期待に応えるべく、中学は私立の女子校を勧められるままに受験し、入学した。


今思えば良き友人には恵まれた。でも、女子校独特のまったりゆるゆるの空気が肌に合わなかった。


成績は常にダントツ1位をキープしていたけれど、どうにも馴染めない。


そんな焦燥感を払拭すべく習い事に没頭する毎日が続いた。


部屋で読書をしていると、


コンコン!


ノックの音がして、


「ひとみ!入ってもいいか?」


お兄ちゃんの声に、弾かれるようにドアを開けて、


「お兄ちゃん!帰ってきたの?」


嬉しくて、お兄ちゃんに抱きついた。


8歳上の兄、政孝は、子供の頃から成績優秀、スポーツ万能、おまけに優しくて誰からも好かれていた。


お父さんとお母さんにとっては自慢の息子で、いつも私を助けてくれるお兄ちゃんは私のヒーローだった。



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