ただならぬ空気を纏った仲居さんに、嫌な予感が走る。
「あの……私が浅倉ひとみですが、何か?」
恐る恐る声をかけると、仲居さんはホッとした表情半分、厳しい表情半分で、
「急病人です!お連れ様が今、付き添っていますが、浅倉様にすぐ来るよう言付かってまいりました」
「……ッ!!!!」
急いで服を着て、
「案内してください!!!!」
着物と草履とは思えないほど軽いフットワークの仲居さんの後を追った。
フロント階まで来ると、浴衣姿の宿泊客であふれ返っていた。
見たいのはわかるけど、
「治療の妨げになりますので、部屋に戻るか離れるように言ってください」
そう仲居さんにお願いし、
「医師です!通してください!!!!」
人垣をかき分け、中心へと入っていくと、カーペットの上に横たわる老人に汗だくになって胸骨圧迫を施す慎吾の姿があった。
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