「ちょっと!ゆっくりしようって言ったのに、寝かさないって矛盾してない?」


反論するも慎吾は痛くも痒くもない様子で、


「さ、チェックインしようぜ。旅館なんてあまり泊まったことがないから楽しみだな」


スルーを決めこみ、トランクから荷物を出して、出迎えに来たスタッフに渡した。


チェックインを済ませた後、仲居さんに部屋まで案内された。


和洋室の落ち着いた雰囲気の広々とした部屋。


大きな窓の向こうには相模湾が一望できる。


「今夜はこちらから花火がよく見えますよ」


仲居さんはそう言うと、窓を開けた。


広々としたベランダから見える青く綺麗な海に胸が躍った。


仲居さんは部屋の説明を一通りすると、浴衣を取りに部屋を後にした。


「わぁーっ、すごい!」


ベランダに出ると、大きく伸びをし、景色を眺めた。


「今夜が楽しみだな」


慎吾が私の肩に手を回す。


嬉しいような恥ずかしいような、何とも言えない気持ちになる。


「うん」


短く答え、慎吾の腰に腕を回した。



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