笑顔の紗英ちゃんの横でお母さんが、
「事前の説明で大量出血や歯が欠ける場合もあるということを聞いていたので心配でしたが、手術が終わって麻酔が切れかけて意識が朦朧としている中、痛がっているのを見ていられなくて代われるものなら代わってあげたいと心底思いました。
でも、麻酔から醒めて第一声が『お母さん、マンガ取って!』ですからねー!」
もう、嫌になっちゃうわー!なんて、豪快に笑った。
ははは…。
確かにオペ後、様子を見に行った時に紗英ちゃんはマンガを読んでいた。
何事もなかったように黙々と……。
「もうっ、お母さん、それ言わないでよー!」
紗英ちゃんが恥ずかしそうに言うと、
「だって、本当のことでしょ?でも、元気になって本当に良かった」
優しい笑みを浮かべて紗英ちゃんの頭を撫でるお母さんに胸が熱くなる。
ふたりを見ていて思った。
今まで考えたこともなかったけれど、お母さんになるのも悪くないかな、と。
紗英ちゃん母子に別れを告げ、NICUへと向かった。
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