あたしの心はゆったりとした安堵感に包まれた。
やっぱり落ち着く。この風景。
ここにいれば心に余裕もできて、今回の件も冷静に受け止められそうだ。
間もなく屋敷に着いて、あたしたちは牛車を降りた。
さっそくニワトリの鳴き声と牛の鳴き声が聞こえてきて、心を和ませてくれる。
太い立派な桜の木が、いたるところで満開状態。
枝の先まで花を咲かせて、里山に可愛らしい彩りを添えていた。
門川の桜も雅でいいけど、ここの桜もまた、素朴でいい味だなぁ。
あの一面の黄色い絨毯は菜の花畑かな? うわぁ、すごく綺麗!
あたしは上機嫌で、うーんと目いっぱい背伸びをした。
そして清々しい空気を胸いっぱいに吸い込む。
んーーー、爽快! ほんと素晴らしい!
「あー、体中から嫌なモヤモヤが、ぜんっぶ抜け落ちていく気がするー!」
「そうか。そりゃ良かったな」
・・・・・・・・・・・・!
伸びをしたまま、体がビーンと硬直した。
ヒクッと頬が痙攣する。背中に嫌な汗が浮いて、サーッと冷えていった。
まさか・・・まさか、この声って・・・・・・。
ああ、神様仏様。闘神 璃王さま。
どうか、どうかこの声が空耳であってくださ・・・・・・
「おう、待ってたぜ里緒。遅かったな」
「やっぱり浄火ーーー!?」
屋敷の玄関先で浄火が、地面に座り込みながらニワトリにエサをやっていた。
のんきに笑いながらあたしに手を振っている。
「な・・・な・・・なんであんたが、ここにいるの!?」
「信子ババに言われたんだ。まず真っ先に権田原の一族へ挨拶してこいってな」
「バ・・・・・・!」
ババァーーーーー!
こっちの手の内読んで、先回りしやがったなーーー!?