目に痛いほどの赤い炎が鮮烈に周囲を染める。
巨大イソギンチャク本体を包み込む滅火の炎は、思う存分暴れまくった。
天に向かって一直線に焔立つ紅蓮。
大気と鼓膜を揺るがす爆音。
あたしの内側から溢れるエネルギーに連動するように、ここぞとばかりに躍動する。
それはまさに、狂喜乱舞。
砂浜中を占拠していた無数の触手も、一本残らず猛り狂う炎の餌食となった。
声にならない断末魔の様子が、炎を通して手に取るように伝わってくる。
限りない阿鼻叫喚と、煉獄。
でもその中であたしの心は、不思議なほどに澄んでいた。
(あぁ・・・・・・)
炎。炎。この炎の存在。
あたしは目を閉じ、両腕を大きく広げる。
ドンッ、ドンッと脈打つような血の流れ。歓喜の鼓動。
感じる。
大気が鳴動する炎の息遣いと、あたしの細胞全てが同化している。
火が揺れるたび、あたしの命が呼吸し、揺れる。
連綿と受け継がれるあたしの世界。
これがあたし。
ただ、『あたし』。
神の力という、うわべの問題に迷っていたけど。
力が戻ったいま、やっと本当に理解できた気がする。
持てる者とか、持たざる者とか。
こっち側とか、あっち側とか。
違うんだ。
あたしは、あたしとしての存在に満ちて、この世界に生まれた。
だから、この命で精一杯に存在している。
それはこの世の、全ての命の姿。
羨みも、蔑みも、憎しみも・・・
そんなもの、この命と姿を前にしては、なにもかも『クソッ喰らえ』なんだ。