体育祭最後の競技とあって、さっきとはまた別の緊張感が漂っている。
どの子もやっぱり輝いていて、
いーなー。と思うばかりだった。
手を取り合って喜んだり、
涙を流す仲間を励ましたり、まるでドラマの中のようなワンシーンに、
胸を打たれる。
泥でくちゃくちゃになった人も、今ならなんでもかっこよく見えた。
俺は自分のまっさらな体操服をみる。
こんな体操服の人は誰もいなくて恥ずかしい。
べちゃ、と泥をつけてみるけど、不自然で仕方ない。
ゴロンと寝転がる。
いい感じに砂がついて、汚くなった、
いつもはうっとおしいと思う、土も、
輝くための物だと思うと、きらきら光って見える。
目の前に広がる空に雲は一つもなくて、
やっぱり体育祭を応援している。
突然美帆の顔がまじかに広がる。
『どうしたの?やっぱ体調わるいの?』
『全然、絶好調だわ。』
俺は起き上がりながら答える。
『ならいーけど、絶対無理しちゃダメだよ。』
そういって笑い、俺の隣に座る美帆。
久しぶりにみた横顔が可愛すぎて、愛しすぎて肩をよせる。
しばらくしてから急に立ち上がる美帆。
『次、二年生だから行かなきゃ。
とびきり近くで見てて!行こっ!!』
と俺の手を引きどこかへ歩く美帆。
美帆につれてこられたそこは、来賓の方や、市長が座っている席の辺りで.....
「なんでここなの?」
と俺は小声で尋ねる。
今日の美帆には小声なんていう手段はないみたいで、
『だって一番見えるし、いーじゃん。』
『まぁ、そうだけど....』
『でしょー、ちゃんと見ててね!いってくるー!!』
と言って手を振りながら走っていく美帆。
今度はしっかり見える後ろ姿に、
『いってらっしゃいー!頑張れ。』
と声をかける。
俺にできないことを、俺ができないことを、精いっぱい楽しんで。
頑張れ、美帆。頑張れ。