少し先を急ぐように歩く美帆。


『ねぇ、6時間立っちゃったよ。』

『うん、怒られるな。』

『そうだ。怒られちゃうよ。私まで怒られるじゃんか。』


やめてよ。と笑う美帆。
その笑顔はまた切なくて...

美帆が背中に背負っているものの重さに気づく。

俺に分けて。俺が持つから。
『一緒に背負うから。』


思わず出た言葉に美帆が反応する。


『ん?なに??』


『こっち向いてよ。』
全然振り向かない美帆に声をかける。


美帆が立ち止まり振り向く。

美帆がしまっているものはなに?
溜め込んでいるものはなに。

それを探すように抱き寄せる。


『早く行かなきゃ。怒られちゃう。』


『いーよ。』


『ダメだよ。無理したら....』


『無理したら?』


『手術できなくなったら、一緒にいれないじゃん。約束した。そばにいてくれるって、言ったじゃん。不安だよ。ゆうが近くにいても遠くにいるみたい。』


『もっと俺を信じて。』


『誰よりも信じてる。信じてるけど、不安で不安でたまらないときだってあるよ。』


『ごめん。』

美帆の背負っているものに、少しだけ触れた気がする。このまま俺に全部、預けて。


『美帆。』

優しく呼ぶと、あげられる顔。
見上げられる瞳が泣き出しそうに揺れる。


『好き。世界で一番美帆を愛してる。』
『必ず帰ってくるから、待ってて』

ぎゅっと込められる力。心なしか震えている。


『わたしも好き。誰よりも好き。
ずっとそばにいて、私だけを見て。
信じてる。ずっとずっと待ってるから。』


そしてまたキスを交わす。
約束を心に刻むように。