「由紀ちゃん彼氏いるの?」


朝のホームルームで出欠をとっていると、鈴木君が私に質問攻めをしてきた。



「鈴木君、質問はいいから返事をして」

「由紀ちゃんが質問に答えてくれたら返事するよ!」



やめて、鈴木君。

私はここにいるだけで精一杯なんだから!!



「ねぇ~、由紀ちゃん彼氏いるの~?」



も~、お願いだからやめて!!




私が困り果てていると、あの人の声が聞こえた。


低くて落ち着いた声‥。



「俺、トイレに行きたいから早くすすめて下さい」



私の顔が、あの人の声で一気に熱くなる。


「あっ、ごめんね。すぐ終わらせるから…」




私は、顔が赤くなっていないことを祈りながら出欠をとった。




私があの人の名前を呼ぶ‥




「高橋君」




「はい」






あの人の返事だけが、

特別に思えて、


私の胸の鼓動が、別のものに変わっていった。