【短】あの人と私~赤ずきんの恋~

「あ、その本…」


私は平然を装って、あの人が持っている本を指さした。



「これ読みに来たの?」


「うん‥」


「残念でした!この本は俺がこれから読むの」



あの人が私に意地悪するように言う。




私の心は、その声にまでドキッとしてしまう。



どうして私の体は、こんなに素直なんだろう‥


鼓動と共に顔が赤くなっていく。




本当は心も素直になりたい。


だけど、それが出来ないから

私の体は心の分まで反応してしまうのかもしれない…。





「じゃあ、明日読みに来る」


「なんでこの前、借りていかなかったの?」


「私、すぐに失くしちゃうから…」




私はとっさに嘘をついてしまった。


本当は、この前借りなかったのは

あなたに会った余韻に浸ってて借りられなかったの。



だけど、そんなこと絶対に言ってはいけないことだから…。




嘘をついた私は、あの人の顔が見れなくなり図書室を出ようとした。



その時、後ろからあの人の声が聞こえた。




「一緒に読む?」





私は嬉しくて、嬉しくて


気がつくと「うん」ってあの人に頷いていた。