遠くまで届くようになったライトに、白く小さな花の群れが映った。

次の瞬間、霧は嘘のように晴れた。

花の群れは顔を出した月の光に、一面匂い立つような青白い姿を競演させた。

たぶん宵待草(*マツヨイグサの異称)の群れだろう。

まるでメルヘンの国へ誘うような不透明な青白い輝きを放っている。

その輝きを見ていると、頭の芯に住み着く疲労が昇華されるのを感じた。

「宵待草だわ。河原が近い事を教えているのよ」

最後に乗せた女が言った。

「橋が近いということだね」

「ええ、そうよ」

その後、女たちは口々に感嘆詞を呟いた。

(そうか!?)

俺は彼女たちが何故似て見えるのか、分かったような気がした。

彼女たちは夢に見たスミレなのだ!

彼女たちに共通した透き通るような真白な肌と、少女のように小さな顔は、ひっそりと草原に咲くスミレを彷彿させずにはいられなかった。

(まさか…)
夢の中で夢を見ているのでは?という危惧が生れた。

古典的な方法で確かめてみた。

痛かった。

少なくとも夢ではないようだ。