「そういえば、昔の佐藤くんってさとうって名前なのに全然甘くなかったよね」

「また佐藤くん」

「……あ」

「で、なに? 何が甘くないって?」

「え、だから、さとうって名前なのに甘くないってはなしを、」



私の声は、遮られた。


なぜなら、繋がれていた手にぎゅっと引っ張られ、私はそのまま那月くんの思うがまま、引き寄せられる。後頭部には、手を添えられ。


本当に、少し触れるか触れないかくらいの、短いキスが、降り注ぐ。



「誰が甘くないって?」

「……ええっと、誰だっけ」

「俺、甘えたいし、甘やかしたいタイプだから」

「っ!」

「覚悟してね」



そういって、砂糖菓子のように微笑む彼は、まさしく佐藤で、砂糖だった。

つまりは、こういうこと。

佐藤くんは甘くない。じゃなくて、佐藤くんは甘すぎる。