そういって、那月くんはその長いまつげを伏せて、ゆっくり私の顔に近づいてくる。そして、吐息が頬に触れるほど距離が近くなった、その瞬間、スマホが震えた。



「あ、ごめ」

「……」


むすと口を膨らませて、那月くんがさっさと見れば、とでもいうように顎でくいっと催促してくる。私は見つめられるその視線に居心地の悪さを感じながら、スマホの画面を開くと、恭ちゃんからだった。内容は、さっさと戻ってこい、と簡潔的なもの。


「あーそろそろ戻ったほうがいいかも」

「……」

「ほら、いこ。那月くん?」


手を握りしめて、渋々ながら立ち上がる那月くんを引きずるように、私たちは屋上を後にした。


教室に戻ると、恭ちゃんとひまりちゃんが何やら仲良さげに話し合っているのが見えた。ドアを開けたとき、音で気付いたのか恭ちゃんがこちらを振り返る。


「おっせーよ、お前ら堂々と授業さぼんなよ」

「言い訳するの、大変だったんだよ」

「面目ない」

「ノート取っといてやったから、ほら、ファミレス行くぞ」

「私抹茶パフェがいいなぁ」



相変らず、話のまとまらないメンツだ。

ひまりちゃんと恭ちゃんが隣に並び、私たちはその後ろについていく。頑として、手を離そうとしない那月くんは、最近輪を掛けて甘えん坊だ。


てくてくと歩く、彼を横目に、私はふと昔のことを思い出す。