優しく、優しく、壊れ物を扱うように、恭ちゃんが私の頭を撫でる。
その温かさが、優しさが、張りつめていた糸を解きほぐしていく。堪えていたものも、押さえてたものも、全部コップから溢れてしまうみたいに、いつの間にか、私の頬には冷たい水滴が、ぽろりと零れ落ちていた。
「だって、そんなの、誰も幸せになれないって、お前分かってるだろ」
「……あ、」
「佐藤も、朝比奈も、俺も、きっと傷ついてるお前を見て、幸せになんてなれない」
「で、も……っ」
私は。
唇を噛みしめる。流れる涙が、抑えきれそうになかった。
でも、それじゃあ、何も変わらない。
私は、佐藤くんとひまりちゃんに幸せでいてほしい。
二人の邪魔を、したくはない。
「───じゃあ、聞くけどさ。お前は、なんで、そんな顔するんだよ」
「え」
「そんな、今にも泣きそうな顔で、いろんなもの押さえつけたような顔、するんだよ」
「……それ、は」
「好きなんだろ。どうしたって、あきらめられないくらい、好きなんだろ」
「ちが、う」
「違わないよ。そうじゃなかったら、そんな顔しない」
恭ちゃんは、泣きじゃくる私の肩をそっと抱きしめて、耳元でふっと囁く。それは雪のように、溶けてしまいそうなほどか細くて、小さな声だった。
「───傷つくことを怖がってるだけじゃ、前になんて進めない。だから、もう、逃げるなよ」



