佐藤くんは甘くない


「───」

「お前さ、こんなところで、こんなことしてて、いいのかよ」

「……どういう、意味」


「知ってるよ、全部。朝比奈さんが今日、佐藤の告白受け入れるってことも。それから、多分お前が、結局佐藤に気持ちを伝えられなかったって、ことも」


「……」

目を細める。


見上げた夜空からは、星が降り注ぐ代わりに、白い雪がふわりふわりと、落ちていくのが見えた。私はそっと、落ちてくるその雪に手を伸ばし、指先に乗せる。それは、たちまち熱を持ち、水となって、するりと指先から零れ落ちていく。


「お前、言ったよな」

恭ちゃんは、優しく包むような、声音で私に語りかけてくる。


「私は間違ってないよね。これでいいんだよね。これで、みんな幸せだよねって」
……そんなこと、言ったっけ。

いや、言ったか。
それは、今も、思っていることだった。
だから、私はここにいる。
よいしょ、っととおっさんくさい声とともに、恭ちゃんが背中に乗っている私ごと身体を起こした。

そして、くるりと向きを変えると、そっと私の頬に手を添えて、小さく微笑んだ。


「じゃあさ、お前は、どうなの」

「……どういう、こと?」


「みんなが幸せだって、お前は言うけど。お前は、幸せなのか?」


その言葉が、どれほど、胸に深く突き刺さったろう。
一番聞かれたくなかった言葉を、一番聞いてほしくなかった言葉を、一番聞きたくなかった言葉を、恭ちゃんはいとも簡単に見抜いて見せる。
知らないふりを、し続けた。


みんなが幸せになれるならそれでいいじゃないか。恭ちゃんも、佐藤くんも、ひまりちゃんもみんな、幸せ。幸せ。
…………じゃあ、私は?
私は、今、幸せなの?


「俺は、お前が好きだよ」

「……っ」


「好きだけど、今のお前は、ものすごくかっこ悪いと思う」