佐藤くんは甘くない



「きょうちゃぁああん」


適当な紙をくしゃくしゃにしたごみをぽん、と恭ちゃんの部屋の窓に投げつける。何度か投げつけた後、カーテンの閉め切られていた窓に、人影が映り込む。


私はベランダの手すりにもたれ掛りながら、恭ちゃんがガラガラと窓を開けるのを待っていた。


「うわ、寒っ」


窓を開けて、白い息をはきながら厚手のパーカーを羽織っただけの恭ちゃんが、両手で自分の腕をこすり合わせながら、ベランダの手すりに手を掛けた。


私と恭ちゃんの部屋のベランダは、ほんの数センチほどしか隙間がないから、私が身を乗り出して恭ちゃんに向かって手を伸ばすと、恭ちゃんは白い息とともにため息をつきながら、


「俺がそっち行くから」

と、言って伸ばした手を払いのけ、ひょいっと私の部屋のベランダに着地する。


「寒いねぇ」

「今日、雪降るらしいって」

「へえ、ホワイトクリスマスだ」



ぼうっと、息をはきながら虚空に溶け込んでいく空を見上げた。

その空はいつもと変わりない。手の届かないほど遠くに、私には綺麗すぎるほどの星たちが煌めいていた。

恭ちゃんはベランダに腕を掛けてもたれ掛る。私はその背中に、背中をくっつけて、もたれ掛る。

「今年も、結局恭ちゃんとクリスマスだなぁ」

「悪いかよ」

「リア充爆発しろ」

「それは同意」


くすくすと、二人で笑いあう。


時折通る車の音くらいしか、聞こえてこないほど静まり返っていたが、逆にそれが心地よかった。背中に感じる優しい体温に目を閉じて、私はまたため息を吐く。


「……なあ、一個だけ、プレゼント代わりに、聞いてもいいか?」

「んんー? まあ、聞くだけなら、いいけど」

首を傾けて、恭ちゃんが何を聞いてくるのか、耳を澄ませる。
恭ちゃんは、一瞬、何か言いまどうように息を吸い込むと、それを吐き出すような気軽さで、言って見せた。





「俺と、付き合う気、ある?」