佐藤くんは、本当に私と話すことはなくなってしまった。
次ぐ日、下駄箱で遭遇しても顔色一つ変えずに、私なんていないもののように、素通りしていった。次の日も、そうだった。その次の日も、その次の日も、佐藤くんは私なんて一度も見ていなかった。
張りつめた佐藤くんの横顔を見るたびに、息苦しさがやってくる。
呼び止めたいのに、上手く声が出ない。呼び止めたところで、いったいどうするというんだろう。
これでいいじゃないか。
私も佐藤くんを諦める算段が付いた。
なら、このまま時間が経てばこの辛さも、痛みも引いてどこかへ消えてしまう日がやってくる。そうやって、自分に言い聞かせて、私も佐藤くんを見ないようにした。
そんな日々が続いた、クリスマス会前日、それは起こった。
「遅かったね」
そうやって、微笑む彼女は、どこか冷たい。
私は両手いっぱいに抱えた木材を、ぎゅっと握りしめたまま彼女を見返す。
クリスマス会での進行は、特に大きなミスもなく順調に行われ、夜遅くまで残って手伝ってくれていたクラスメイト達たちを返し、私はいらなくなった木材を抱えて、教室に戻って、そして、彼女───ひまりちゃんに遭遇した。
ひまりちゃんとは、最近あまり話してはいなかった。
それもそのはずだ。
佐藤くんが私を避けるのなら、必然的に、恭ちゃんは私のそばに。佐藤くんはひまりちゃんのそばに。そんな風に自然と別れて、いつの間にか毎日話していたのに、ひまりちゃんともあいさつ程度になっていたから。
「どったの? ひまりちゃん」
私は軽い口調で、ひまりちゃんに問いかける。木材を持ってきた紙袋に入れて、机の横に掛けていた鞄を肩に掛ける。
その間、ひまりちゃんは私のそばに駆け寄ってくるものの、特に何も言わなかった。
「こはるちゃん待ってたんだ」
「……んん?」
少しだけ、嫌な予感がした。
私は嫌な予感のする時だけは、大体的中するのだ。そそくさと、ひまりちゃんのそばを離れそうと、踵を返して、すたすたドアまで行こうとした、その時だった。



