「まんまと引っかかってくれましたね、佐藤くん」
「…………なんで」
「そりゃあ、私も前の夜にさんざん困らせられましたからねぇ。その仕返しですよ」
「……」
「驚きました?」
くっくっくと、佐藤くんを嘲るように笑った。
佐藤くんは、何も言わなかった。
何も言わずに、私の顔を見ていた。けれど、その何も見えない無表情が、どこか苦しそうで、痛そうで、手を伸ばして本当はちがうんです、って言ってしまいそうになる衝動に掛けられた。
本当は、嘘なんかじゃない、ですよ。
違うんですよ。
枯れるほど涙を流して、そうやって思いを吐き出してしまいたかった。
佐藤くんは、そうやって枯れた笑みを浮かべる私から視線を逸らす。まるで見たくない現実から目を逸らす様に。そして、片手を顔の片面に押し当てて、それからくすくすと自嘲気味に、笑った。
そのあまりにも冷たい笑い声に、びくりと握りしめた拳が震える。
「驚いた……? 驚いたよ」
「あははは、そりゃあ、こっちも上々ってもんで、」
「───結城が、そんなことする奴なんだって」
貫かれたような衝撃が、心を駆け巡る。



