佐藤くんは甘くない



「……結城が熱を出して、寝込んだ日、俺、お前の部屋に行ったんだ」

嫌だ。


「ねえ、教えて」

嫌だ。

嫌だ。

嫌だ。


言わないで、お願いだから。


私に、それを、どうか、言わせないで。

お願い、お願い、佐藤くん、これ以上私を───


「───あの言葉は、本当?」


目の前が、真っ暗になったような、感覚だった。

いっそのこと、このまま失神でもしてぶっ倒れてしまえたのなら、どれほど、よかったのだろう。

私は、息を飲みこんだまま、佐藤くんの瞳から目を離すことができなかった。その瞳があまりに、真剣みを帯びていたからだ。


私を逃がさまいと、佐藤くんが私の腕をつかむ。

その瞳に射抜かれた私は、あまりにも残酷で、逃げ道すらない地獄のような沈黙に、ただただ黙って耐えるしか、なかった。


だめ、だ。

「ちゃんと、聞きたい」

いやだ。

「“恭ちゃん”に向けて言った言葉なんかじゃなくて、」

いやだ。


そんな目で、私を見ないで。
そんな言葉を、私に掛けないで。
やめて。やめて、お願い。

勘違い、してしまいそうになる。
……私を受け入れてくれるんじゃないかと錯覚しそうになる。