「……私、佐藤くんに何かしましたか?」
「……」
「私には心当たりがないので、どうしたらいいのか分からないんですけど、とりあえずそうやっていちいち逃げるの、やめてくださいよ」
「……」
「私だって、露骨に避けられて、傷つかないと思ったら大間違いなんですよ」
「……だと」
ぽつり、と佐藤くんは呟いた。
上手く聞き取れず、私は佐藤くんの顔を見上げる。たぶん、怪訝な顔をしていただろう。
佐藤くんはいまだ私の顔を見ないままに、また同じ言葉を繰り返す。
「誰の、せいだと……思ってるの」
「は?」
「結城が、変なこと言うから」
「私が?」
私が、いつ?
いつ、そんなことをした?
まったく思い当たる節がなく、顔を顰める。佐藤くんは、いつからこんな風になってしまったのだろう。確か、ひまりちゃんたちの言葉を借りれば、修学旅行明けから。私が佐藤くんに最後にあったのは、初日の夜が最後だったはず。でも、そのせいでこんなにも佐藤くんが私に対して、露骨に避けるように、なるものだろうか。
他に、理由が?
何か、あったか? ほかに、佐藤くんが私を避けそうになるような───……あ。
一つだけ、思い当たる節が、あった。
いや、でも、そんなはず。
違う、違う、違う、違う。
ぶわっと、身体の毛穴から、汗が噴き出す。それはべったりと、肌に張り付くような不快感を伴って、私から離れることがない。
佐藤くんは、覚悟を決めたのか、ぎゅっと手を握りしめ逸らし続けていた瞳を、私に向けた。その瞳の中に映り込む私は、取り繕うものも、隠れるものも失ってしまった哀れな表情を浮かべたまま、動くことも出来ず、固まっていた。まるで、楔に囚われたように。



