私は、ため込んでいた脚力を放出する要領で床が抉れるんじゃないかと思うほど蹴り上げ、ドアと離れていた距離を一気に詰め寄り、油断しきっておざなりになっていたドアの押す力は払いのけるように、乱暴にドアを開ける。
慌てたように、数歩後ろに下がろうとする佐藤くん。
逃がすもんか! 私はそのまま、イノシシのように佐藤くんのお腹あたりに突進して、そのまま前に突っ込んだ。一瞬、身体が浮いた浮遊感ののち、どん!! と痛そうな一撃を思わせる、鈍い音が響く。
「った……」
「いた、たた」
突進の勢いが付きすぎあまり、床に思いっきり膝をスライディングしてしまったようだ。やけに左ひざだけが熱い。私は、痛みに顔をゆがめながら、そっと顔を上げて。
「───」
濡れた瞳が、じっとこちらを見ていた。
温かな吐息が、頬り降りかかる。すぐ近くに、佐藤くんの顔があった。あれ、これなんかデジャウ?
佐藤くんは、冷静にそんなことを分析する私とは真反対に、首までじわじわと赤く染め上げたまま、ぶんっと首が思わず取れてしまうんじゃないかってほど、勢いよく私から視線を逸らした。
「なっ、何してんの!? 意味わかんない! なんで追っかけてくるわけ!? ついてくんなって言ってんのについてくるしっ」
「そりゃ、佐藤くんが逃げるからですよ」
「逃げてないってば!」
「じゃあ、ちゃんと私の顔、見てくださいよ」
佐藤くんは本当に、分かりやすい。
恥ずかしさを押し殺すみたいに、きゅっと唇を噛みしめる。それが、私の言葉に対する答えなのだと悟る。
ふう、と小さく息をついた。それにすら、佐藤くんの肩は過剰に反応する。
さて、どうしたもんか。



