佐藤くんは甘くない



「……あの? これは」

「風邪ひいてるお馬鹿さんへ献上」

「……もしかしなくても私ですか」

「他に誰かいるとでも」


ぷしゅ、とプルタブを開けて私はちびちびといただくことにした。そうしなければ、今にも私を突き刺して殺しそうな眼光をしている佐藤くんをいなすことはできないと判断したからだ。


口いっぱいに、温かな甘さが広がる。ほうっと、息をつく。


いつの間にか隣に腰を下ろした佐藤くんは、不機嫌そうな顔で私の髪を掬った。びっくりした。思わず缶を落としそうになった。最近、佐藤くんの行動が全然読めない。女の子に対して、耐性がついてきたせいなのだろうか。割と私を触るのも、躊躇がなくなってきている気がする。


「な、ナンデショウカ」

「タオルかして」

「えっ」

「早くして」


威圧に負けて、私は首にかけていたタオルを佐藤くんに手渡す。何するんだろう、と思ったら今度は私の頭にそのタオルをかけて、わしゃわしゃと拭いてくる。

「さ、さとうく、」

「黙れ」

「さすがにこれはちょ、一人でできますから」

「修学旅行が楽しみすぎて、窓をあけっぱにしたまま寝たどこかのお馬鹿さんのことなんて聞けません」


「ジーザス!」