あ、と声が漏れる。
瞬時に、言い訳も取り繕う言葉も言い出せない頭の弱さ加減に自分の頭をたたき割りたくなった。
佐藤くんが何かを言い出そうと、口を開き私のほうにやってくる、その直前───私の視界は、黒く染まる。
それが、恭ちゃんの背中で、私を守るように恭ちゃんが目の前に立ちはだかってくれたのだと、気付いたのは佐藤くんが口を開いた時だ。
「……なに、してるの」
佐藤くんは、何かを押し殺したのような、それでいて今までに聞いたことのない様な平坦な声でそう言った。
「おいおい、お前らこそ遅かったなぁ。なんだよー、俺らがいなくてもお前らの中は順調に進んでってくれてるみたいで、俺も嬉しいよ。なっ、ハル」
急に話題を振られる。振り返った恭ちゃんの口元には、いつも通りの私の幼馴染を演じていてくれた。それにつられ、私もいつもの私を取り繕うことができた。
「ほんっと! もう後で何があったか教えてね、ひまりちゃん!」
「え、あ……う、うん」
私が笑いかけると、ひまりちゃんは微妙な顔をしながら微笑む。
「じゃあ、もどろっか! たぶん、私たち一番最後だよ~」
くるりと向きを変えて、私と恭ちゃんが先頭になって歩きはじめる。
その時、たぶんいろいろ恭ちゃんが話しかけてくれたし、私もそれを明るく受け答えていたけれど、佐藤くんだけは何も言わなかった。
ただ、じっと黙ったまま、時折後ろを振り返った時に視線が合って、佐藤くんは思うことがあるのか眉を顰めるだけだった。そのあとも、佐藤くんが喋ることは一切なかった。



