佐藤くんは甘くない



「恭ちゃんはさぁ、狡いよね」

「ん」

「だって、こんな姿、誰にも見られたくないのに、なあ。恭ちゃんにだけは、どんなに隠したってばれちゃうんだ」

「お前のこと、よく見てるからなぁ」

「……私は、間違ってないよね」


恭ちゃんは、何も答えない。


ぎゅっと、縋り付くように私は恭ちゃんの制服を握りしめた。


声が震えて、肩も震えて、視界が滲んで、今、こんな姿をほかの人に見られたのなら、私はいっそ首に縄でもかけて自殺していたかもしれない。


……あ、そっか。

だから、私は安心するんだ。恭ちゃんが、弱い私を隠してくれるから。だから、こんなに安心してしまう。

「わたし、まちがってないよね。これで、いいよね。これが、せいかいだよね」

「……」

「これで、いいよね。これなら、みんな、しあわせだよね」

「……なあ、ハル」


そっと、肩を持たれ私は恭ちゃんから離れるように促される。冷たくなってしまった私の身体から、恭ちゃんの体温が消えていく寂しさをぐっとこらえ、けれど握りしめた制服は手放さな


いまま、私はそっと顔を上げる。

恭ちゃんはじっと、私の顔を見据えていた。


揺るぎない瞳に、ぐらぐらと天秤の針が不安定に動く私の瞳が映り込む。