佐藤くんは甘くない



「もし……佐藤くんがいやがるようなこと、しちゃったらって……」

「……」

「もし、佐藤くんがしつこいな、とかめんどうだなって、思っちゃったら、どうしようって。もし、顔を合わせて何もいえなかったらどうしよう、愛想ない奴だってきらわれちゃうのかな。ほんとうは、しゃべりたくて、伝えたいこといっぱいいっぱいあるのに、緊張でうまく、口が動かなくなっちゃう」

「……」

「それが、こ、わくて……でも、やっぱり、佐藤くんのそばにいたいって思って……こわい、こわいよ。こんなこと、はじめてで。ずんずん、自分のしらないうちにいろんなきもちが増えて言って、溺れそう。でも、こわいからなにも、できなくて」

「……ひまりちゃん」


私はそっと、彼女を引き寄せて、とんとん、と優しく背中を叩く。


すると、一瞬身を固くしたひまりちゃんも私の肩に額を押しつけて、何度も大きく深呼吸を繰り返す。

「大丈夫だよ」

「……どう、して?」

「それは、」



───どれほど、佐藤くんがひまりちゃんを好きか、知っているから。


その言葉は、私の口から紡がれることはなかった。

私は小さく微笑み、見上げるひまりちゃんの頬にそっと手を添える。