変なところに全力投球するところは、びっくりするぐらい素直で、かわいいと思ってしまう自分のおつむの悪さ加減に頭を痛めながら、私はそのマスクを取り上げる。
「あっ」
「あっ、じゃないよひまりちゃん! さすがの私も、これは許せない。ひまりちゃんの可愛さに免じても許せない」
「で、でもこれならちゃんと面と向かって話せると思うんだ!」
「面と向かって話す前に、自分と向き合おう? 一時のテンションに身を任せてもいいことひとっつもないからね?」
「うう……」
そこまでマスクの取り合いをしていたひまりちゃんが断念したかのように、がっくりと肩を落としてしまった。
「ひまりちゃん、こんなことしてても時間は待ってくれないよ。進みだす一歩ってのも重要だよ」
「で、でも……」
ばっと、ひまりちゃんが顔を上げる。
その瞳は、まさに恋する乙女そのものだった。熱に浮かされたように、それでいて戸惑いの隠せない甘酸っぱい果実を口いっぱいに含んだ時のような、そんな瞳。
ほかの人のことが頭に入ってこなくなるくらい、ほかのことが何も、頭の中に入ってこないくらい、きっとこの子の頭のなかは佐藤くんでいっぱいになっているんだろうな。
見上げたひまりちゃんが、思ったよりも自分が切羽詰った声をしていることに気付いて、頬を赤らめる。そして、だんだん尻すぼみになっていく声で、呟く。



