佐藤くんは甘くない



「どうしよう……こはるちゃん……」

「んん?」


ぐったりとうなだれていたひまりちゃんが、うううと真っ赤な頬と同じくらい瞳をうさぎのように真っ赤にして、私を見上げる。


「わたし……いったいどんな顔をして佐藤くんに会えば……」

「あー……」


それ先刻、さんざん佐藤くんに言われた奴だなぁ……。

なんて、遠い目をしてみる。


「それで、さんざん悩んだんだけど……これ、つけていけばいいと思ったんだ」

ひまりちゃんは何やらごそごそと背負っていたリュックから何かを取り出す。マスクだった。いや、普通に風邪のときとかに着ける奴じゃなくて、シリコン製のマスク。

しかも馬。馬のマスクを取り出していた。


……まって、え? 何? それつけてどうするの? それで佐藤くんと対面するの? 



いや、確かに顔を合わせることはなくなるけど、それと引き換えに大きなものを失う気がするのは私だけなの?


もしかして、お店を出てからひまりちゃんに一度も遭遇しなかったのは、この馬のマスクを買うために移動していたから……とか?

 
もうわかんない。ひまりちゃんがわかんない。


ひまりちゃんはなにを目指してるの。ツッコみが追い付かない。私の頭が悪いのか? そうなのか? 

この件に関してはそうじゃないと声を荒らげて抗議したくなった。