佐藤くんは甘くない



「……ごめんね」

しゅん、と目の前でうなだれるひまりちゃんのつむじを見る。

「いやいや、全然大丈夫だから」


ぽんと励ますように肩をたたいてやると、ひまりちゃんはやっぱり佐藤くんとのお昼での一件が後を引いているようで、口から洩れる言葉はやっぱり弱弱しい。


はて、どうしたもんかなーと腕を組みながら、ぼうっと周りを見渡す。

お昼を食べた後、ぞろぞろと店内を出てひまりちゃんを探したが結局は見つからず、一度バスに行こうということで戻ってみたら、顔を真っ赤にしたまま、両手で覆い隠しているひまりちゃんがすでに着席していた。

……うん、何も言うまい。


私たちはただ、ひたすらにひまりちゃんの心が静まるのを待つことにした。


ひまりちゃんの心の中がようやく平静を装えるくらいの余裕を取り戻し、話しかけてくれるようになったのは、夕方だというのに、この肌寒い季節だからか、ほとんど空から綺麗な澄んだ月が見えてくるような時間だった。


ちょうど、最後の観光地である竹の道につき、最後尾だった私がバスを降り立ったときだ。ぐいっと、制服の裾を掴まれたときは何事かと思ったが、見てみれば、その頬はやっぱり赤い。


ちょっとやりすぎたかなぁ、と反省する。


そして、先にバスを降りていた恭ちゃんに先に行っていてほしいと告げて、私たちは人だかりから外れ、ひまりちゃんが話してくれるのを待ち、いきなり謝ってこられたところから、振出しに戻る。