佐藤くんは甘くない



「諦めてください。あーんしてもらえるように私が計らってやりますって」

「あーんするように計らう前に、俺の疲労を計らえよ」

「うっ頭がっ」

「今ハル風邪ひいてるから、無茶言ってやんなって」

「瀬尾お前結城の味方するわけ?都合がいい時だけやってくる風邪って何。返せよ、俺のパーカーと気遣い」

「えっ、佐藤くん気遣ってくれてたんですね……ありがとう……!うっ、あんなにツンデレだった佐藤くんが立派に気遣うようになって……ううっ」

「図られた」


なーんて、馬鹿馬鹿しいやり取りもそろそろ店じまいだ。

なんせ、お手洗いからひまりちゃんが帰ってきたから。ひまりちゃんは少しだけ困ったように眉を下げて、そっぽを向く佐藤くんの隣に肩身の狭そうな思いをしながらも座る。なるべくくっつかないように、端に座っているあたり、ひまりちゃんも私たちの作戦で相当ダメージを負っているに違いない。


全員揃ったところで、備え付けのチャイムを鳴らし、やってきた店員さんに注文して料理が並ぶまで待つこと数十分。


「いただきまーす」

みんなの不揃いな掛け声とともに、食事開始。


私は注文したオムライスを食べるのもそこそこに、ちらりと横目でひまりちゃんを確認する。ひまりちゃんが頼んだのは、ほうれん草ときのこのクリームパスタ、佐藤くんがドリア、恭ちゃんがうどんで、見事にみんなバラバラである。いや、むしろそうするようにしたのだけれど。

「ひまりちゃんのパスタおいしそー」


私がそういうと、目の前に座っていたひまりちゃんがふいに顔を上げて、ふわりと微笑む。ちょうどフォークに巻いていたパスタを私の口元近くまで持ってきてくれる。

「はい、あーん」

「あーん」


ぱくりと、一口で口に含む。