「あの……」
「熱は……ないみたい」
「いや、まだひきはじめですから。人の話聞いてました?」
「風邪ひいてんのに、何その恰好。何か着てくるとかそういう考えには至らないわけ?馬鹿なの?あ、馬鹿か」
「だから人の話聞いてますかね!?ひきはじめですから!」
「俺、パーカー持ってるから着て」
「いや、ですから」
「さっさとして」
「……」
何なの。全然話聞いてくれない。
人の話は最後まで聞きなさいって、学校の先生に教わらなかったのだろうか。鞄から取り出した黒のパーカーを頭の上に投げられ、それをしぶしぶ着ながら、私は口を尖らせる。佐藤くんから借りたパーカーは少しだけ自分よりもサイズが大きくて、余る袖を見ながら、なんとなくおっきいなあと感じる。
「言ってよ」
「何をですか?」
目の前で整列する人の頭をぼんやり眺めながら、私はとぼけたように返す。
佐藤くんは、むすっと口を尖らせて、私の横っ腹を肘で突いた後、私にわざと聞かせるようにため息をつく。



