「……大丈夫?」
「……だいじょうぶにみえますか」
「見えないけど」
「じゃあ聞かないでくださいッス」
さっさと並べーと、バスから降りだす生徒たちにびしばし指示を飛ばしている担任を遠目に、私はげんなりと肩を落として、隣にやってきた佐藤くんを見やる。
新幹線が目的の駅に到着した後、いつの間にか長いトイレから出てきた佐藤くんは、死んだ顔でバスに乗り換える私たちを見て、絶句していた。が、ひまりちゃんがいようには聞けなかったのであろう、点呼をとるときになってこっそり私のもとにやってきた。ひまりちゃんの苗字は朝比奈。
私たちからはかなり遠い。この時がチャンスだったのだろう。
「ったく、随分なっがいトイレでしたねぇ」
「……いろいろ、その、心の準備してた」
「心の準備する余裕があるなら、私たちを助けてほしかったですねぇ。ったく、大変だったんですよひまりちゃん。あれは相当がつん、ときたに違いないッス。普段そんなこと言わないからキャパオーバーしたみたいですし」
「……そ、っか」
「何嬉しそうにしてんですか!のろけかこんにゃろう!」
「いたっ」
軽くチョップを食らわせると、佐藤くんはごめん、と小さく頭を下げる。その口元がほころんでいるのは相変らずだけれども。



