佐藤くんは甘くない



思わずトイレ、と言って逃げ込もうとする佐藤くんを摩っていた時に乗せてていただろう腕でがっちりと掴み、そのまま肩を組んで逮捕。


……友情を深めたときにやるはずの肩組が、何かおかしかった。それが死んだ顔と、溌剌とした顔が並んでいるということだと、私は知っていながらにスルーすることにした。

作戦、その一。

『佐藤くんがひまりちゃんの好きなところを言って、仲を深める』



あのあみだくじの中でもかなり上位に入る、恥ずかしいもはや罰ゲームのような命令だった。

「さあ、どうぞ!!」

「吐いちまえよ、きっと楽になれる」

「お前が何したかはわかってんだよ。大丈夫、怖いことなんて何もない」

「やり直せる、きっとやり直せるから」

「苦しいだけだぜ、楽になんな」

いつの間にか、容疑者に詰め寄る警察官みたいになっていた。違いがあるとすれば、私たちが吹きそうになるのを押さえているあたりだろうか。

「……こ、こはるちゃ……い、いいよ。そ、そんなことべつに……」

「だめだよ、これ絶対!ほら、佐藤くん、ひまりちゃんにも気を遣わせるなんて……男なら一発やっちまいなYO!」

「ああ。きっと羞恥心とかいろんなものが爆発するだろうけど、大丈夫だYO!」

「イェア!」

「チェケラ!」


ぷるぷる肩を震わせていた佐藤くんが、なんとも言えない、たとえて言うなら学校の先生を間違えてお母さんと呼んでしまって、慌てて言い訳したものの、先生のほうがにこにこ微笑んでいるせいで、ますます恥ずかしくなって何も言えなくなってしまった小学生のような顔して、ゆっくり顔を上げる。